そうだったらいいのにな Episode 16「天使の名前」
名前……、何が良いかなぁ。
誰の名前？
誰のって、赤ちゃんのに決まってるじゃないか！
怒るなよ、冗談だってば。
決めるにしても、まだ、男か女か分からないだろ？
だから、いくつか考えて、候補を作っておけば、いざとなっても慌てないで済むかな？ って思ったんだ。
男の子ならアレ、女の子ならコレって。
あれ、これ、って付けるの？
イライラさせないでよねっ！ 胎教に悪い！
怒るなって。悪かった、茶化して。
で、お前は考えたのか？
あ……、うん……。あのね……。
「なつき」って、どうかな？ 男の子でも、女の子でも「なつき」。
ふぅーん。「なつき」ねぇ。漢字？ それとも、ひらがな？ カタカナ？
えーっと……、ペン貸して。紙は、これ使って良いよね。んーと……。
男の子だったら季節の「夏」に樹木の「樹」で『夏樹』か、「貴い」で『夏貴』か、「輝く」の『夏輝』。
冬生まれなのに「夏」の字は変だと思うけど、男の子の「なつき」は、ほとんど「夏」が使われているんだよね。
調べたのか？
この前、図書館に行って、名付けの本、見てきた。
あぁ、あの時か。珍しく、お前が図書館に、って思ったんだが。
それで、女の子だったら、奈良の「奈」に、津波の「津」と、男の子と同じ樹木の「樹」で『奈津樹』。
そう、Mr.ゴルドの娘さんと同じ『奈津樹』。どうかな？
つまり、おまえの「もう一つの名前」だな？
早く言えば、そう……。
そんな、回りくどい言い方しなくても、最初から、そう言えば良かったのにな。
だってさぁ。あなたも、自分なりに考えているのかなーって、思って。
恩返しか？ Mr.ゴルドへの。
うん。だって、あの人が助けてくれなければ、あたし、今ここに居ないよ。反対？ ダメ？
例え、俺が「嫌だ」と言っても、お前は付けたいんだろ？
うん……。付けたい。
だったら、答えは一つ。
ありがとう。
＜天使の名前 ＥＮＤ＞