神の元を離れてから、美尾は少なからず予想していた。「死」というものを。
（一刻も早く知らせたくて、注意を怠った私のミスだわ）
薄れる意識の中で、遅い後悔をしていた。
（あぁ…もう……）
ダメだと思った瞬間。美尾は、誰かが自分を呼んでいるのに気が付いた。神ではない。側にいる、ムウ＝ミサとも違う。
――美尾。私だよ、美尾。
――京吾さん！
美尾の魂は、肉体から半分、離れていた。
――美尾、良く頑張ったな。立派な戦いだったぞ。
昔「別れた」時と、寸分変わらない京吾が、笑顔で、美尾に手を差し伸べていた。
――神には悪いが、私は君を連れて行く。これからは一緒だ。こちらで一緒に戦おう。
――京吾…。
美尾は、京吾の手を取った。京吾に引き寄せられるように、美尾の魂は肉体から離脱し、二人は天高く昇っていった。
海堂美尾は絶命した。信楽邸の一角、ムウ＝ミサ独りが見送る中、片手に受話器を握り締めたままで……。
＜終わり＞
「昇天 ～美尾逝く～」あとがき
初出：同人誌（合同誌）「Red Destiny」
改行と言葉を少し直しただけの、ほぼ初出時と同じWEB改訂版。信楽邸で息絶える美尾さんを迎えに来た京吾。あの１コマに思いを込めて……